ゴールドコラム & 特集

Gold Production Costs ? ゴールド鉱山生産コスト

今週はMetals Focus発行の「Gold Focus 2016」から、最新のゴールドの生産コストを見てみます。

2015年はゴールドにとっては価格の下落の続く一年でした。安値は年末に付けた1046ドルで、このレベルは2010年以来の安値でした。その結果、鉱山会社は可能な限りのコストカットを試みました。


(ドル建てゴールド過去2年の動き)


2015年のトータルキャッシュコストの平均は7%下落して$660ドル。これは2011年以来の低いレベル。維持費すべて込みのオールインコストは3年連続で下落し、$897。これは2014年より8%、$263も安くなり、2012年に比べるとなんと19%もダウンしています。ただゴールドの価格自体が下がっているため、オールインコストに対する相場との差、つまり利益マージンは2014年の$291から2015年は$263に低下し、その結果2015年のオールインコストベースでは、ゴールド鉱山業界で採算があっていないのは、わずか16%に過ぎなくなりました。



昨年2015年の鉱山会社の産金コストの大きな助けとなったのは、強いドルでした。実際のオペレーションはその国の通貨建てで行われているので、実質的にそのコストは大きく減少しました。たとえば豪ドルとカナダドルの対ドル相場はそれぞれ20%と16%下落しました。ロシアルーブルはその価値が最も下落して59%の下落、南アランドは18%下落し、ペルーソラは12%の下落でした。

また下落するエネルギー価格も鉱山会社にとっては大きな追い風になりました。たとえばブレント原油は平均すると前年よりも38%下落し、年内には$57から$37まで価格が下がりました。原油の派生商品である軽油は、鉱山での機械のエンジンの動力源に使われ、そして実は鉱山業界では最もコストのかかる消費財である火薬の成分としても使われています。また、都市から離れた鉱山では発電に灯油を使っているという事情もあります。

メタルの価格下落はコストの引き上げとなります。副産物である銅、シルバー、鉛、そして亜鉛はそれぞれ20%、18%、15%そして11%、その価値が下落しました。しかし、ゴールドの価格が下がったことによってロイヤリティ(鉱区使用料)の支払は減少。たいていのロイヤリティはゴールドのスポット価格にパーセンテージを決めて計算されているからです。実際に払われたロイヤリティの平均は1オンス当たり$39であり、3年連続の下落、前年比3ドル安となりました。これまでの最高は2012年の$54でした。ゴールド上昇の強気マーケット(2011年にピークを打ちましたが)では、価格が安い時にはコストに見合わないようなゴールド鉱石のゴールド含有率の低いものを優先的に処理します。そして価格が下がってくると、逆に含有率の高いものへと処理する鉱石も変えていきます。2013年から、この含有率は4%上昇し、現在の平均含有量は1トンの鉱石あたり1.43gとなっています。


(世界各地のゴールド生産コストとその平均)


(ゴールド鉱山生産コストの推移)


岡藤商事株式会社

プロフィール

池水 雄一

Yuichi Ikemizu

スタンダードバンク東京支店長

1990年クレディ・スイス銀行、1992年三井物産貴金属リーダー、2009年より世界一の金取引量を誇るスタンダードバンクの東京支店長に就任し、現在に至る。一貫して貴金属ディーリングに従事し、世界の貴金属ディーラーでBruce(池水氏のディーラー名)を知らない人はいないと言われている。著書に「THE GOLD ゴールドのすべて」など。

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