ゴールドコラム & 特集

Gold 急落

10月4日火曜日、ゴールドが1310ドルから5日の早朝には1266ドルまで44ドルの急落、円建てでも4310円から4185円と一時125円の下落となりました。その引き金になったのは英ポンドの急落です。ポンドは対ドルで1.30を割り込み、過去30年での最安値レベルに来ています。Brexit以来、ポンドはその価値を下げ続けています。新たなメイ政権が強硬姿勢で欧州連合との離脱交渉に臨むという見方から、金融市場ではロンドンの市場としての機能に疑問符が付いているということでしょう。


(英ポンド過去5年の動き)


ポンド安の反面としてのドル高がゴールドへの売り圧力を強めました。(Brexitの時はポンド安と同時にゴールドは買われたのですから、今回はその逆の動きになっています。前回はやはり大きなサプライズの要因が強かったのでしょう。)同時にリッチモンド連銀ラッカー総裁の金利上げへのタカ派的発言もドル買いへの理由のひとつになりました。ゴールドは6月のBrexitで1200~1300ドルのレンジから、100ドル上昇して1300~1400ドルのレンジに入り、それから3ヶ月強、1304ドルが強固にサポートされ、1300ドルを割り込むことがなかったのですが、今回のポンド安・ドル高がそのきっかけとなり、1300ドルを割り込むことで、マーケットに溜まっていた巨大なロングが売り出すきっかけとなり、ほぼ一直線に1266ドルまで下がりました。この原稿を書いている5日の日中には1275ドルまで値を戻しています。


(ドル建てゴールドとドル円の動き:過去10日間)


1300ドルを切ってからの昨日の売りはおそらくロング・リクイデーション(買い持ちの売戻し)であり、フレッシュ・ショート(新規売り)ではないと考えます。今週土曜日発表のCFTCが火曜日のマーケット引け後の集計なので、この火曜日の売りで、どれくらいNymexの投資家ロングポジションが減少したか、非常に興味深いところです。この投資家ロングポジション、過去3ヶ月に渡った1000トン超えが、まず確実に大きく減少しているのは間違いないでしょう。そして、ある程度このロングポジションの整理がついているとすれば、ここから更なる大きな下げはないのではと考えます。米大統領選を目前にして、ここからさらにゴールドを売り込んでいくという投資家はあまりいないのではないでしょうか。そしてこの下げにより、アジアでは中国の休みにもかかわらず、現物の需要が活発になってきています。


(Nymexの投資家ロングポジションとゴールド価格)


次の注目点は10月7日金曜日の米雇用統計。非農業部門雇用者数変化の市場予想は17万人増前後です。(8月は15.1万人増でした。)これよりも悪い(小さな)数字が出るとここぞとばかりにゴールドは買われると思います。これより良い数字が出るとしたら下値のめどはBrexit直前の1250ドル前後だと考えます。


(ドル建てゴールド1年-サポートであった1300ドルと下値めどの1250ドル)


私の知人でもあるSharps Pixley社のRoss Normanは、この下げはまたとない買いのチャンスではないかと言っています。

It’s clear to us that the rationale for buying is more powerful than any time in living memory and these retracements have been few and far between. As they say, insurance is best bought before you think you need it and there has never been a better time than now.

ゴールドの買いを保険に例えて、誰もが必要だと思っていない時に買うのが一番いいタイミングである、と言っています。彼が言うようにこの下げは千載一遇の買いチャンスであるかもしれませんね。


岡藤商事株式会社

プロフィール

池水 雄一

Yuichi Ikemizu

スタンダードバンク東京支店長

1990年クレディ・スイス銀行、1992年三井物産貴金属リーダー、2009年より世界一の金取引量を誇るスタンダードバンクの東京支店長に就任し、現在に至る。一貫して貴金属ディーリングに従事し、世界の貴金属ディーラーでBruce(池水氏のディーラー名)を知らない人はいないと言われている。著書に「THE GOLD ゴールドのすべて」など。

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