中国を巡るゴールド事情
今週は中国を巡る最近のゴールド事情をあれこれ。昨年は実需的な観点からはあまり大きな印象がなかった中国とインドの二大ゴールド需要国。マイナス面ではいろいろとニュースを与えてくれましたが。
「産金国としての中国」
2016年の中国のゴールド生産量は453.5トンとなり、2015年とほぼ同じレベルで、10年連続世界一のゴールド生産国となることが確定しました。
「需要国としての中国」
中国黄金協会(The China Gold Association:CGA)が今週発表した需給統計によると、中国が買ったゴールドの量は970トンと、前年比6.74%の減少となっています。地金とコインへの投資は28%と36%それぞれ増加しましたが、宝飾需要は19%の減少となりました。
CGAによるとBrexitとドナルドトランプという国際的な不確実要因、そして強いドル、FRBの利上げへの姿勢が、ゴールド投資へ人々を向かわせている、ということです。
中国の中央銀行は2015年7月からそのゴールド保有高を増やし続け、現在では1842トンまで増加しています。
「スイスからの中国のゴールド輸入」
スイスから中国へのゴールドの輸出は昨年12月に飛躍的に増加しました。11月は30.6トンであったものが、12月はなんと158トンと416%もジャンプしたことになります。11月のスイスのゴールド輸出全体では191.4トンとまずまずの数字でしたが、これが12月には287.6トンとほぼ倍増、ちょうど中国への輸出分がまるまるこの増加に寄与したことになります。これは旧正月を前に控えた需要が膨らんだのが最大の理由ですが、下落を続ける人民元に対するヘッジとして、そして米トランプ政権による世界の将来の不確実性を背景にしたゴールドの投資需要もあるようです。このゴールドの形態はほぼ1kgバーであり、中国の個人投資家、機関投資家、そしてETFとSGE(Shanghai Gold Exchange)での標準品でもあります。スイスの輸出入統計からは、ロンドンからスイスへのゴールドの流れも目立っています。11月の48.4トンから12月は148トンとちょうどスイスから中国への流れと同じような動きです。これはロンドンのゴールドアカウント(ロコ・ロンドン)から、スイスのリファイナリーを通じて、(99.5%のLarge barを99.99%のkilo barに鋳直し)中国へのゴールドの流れが端的に出ていると言っても良いと思います。ゴールドの流れは東から西へ、これはまだ健在です。しかし、もう一つのゴールド需要の大国インド向けは、11月の63.2トンから12月は20.6トンと激減しています。高額紙幣を突然廃止したモディ政権の政策の影響がゴールドの輸入にも響いています。