トルコで盛り上がるゴールドへの投資
トルコリラの下落が止まりません。過去10年にわたってその価値は下がり続け、2016年後半にはその動きが加速、今年2017年1月後半には1ドル3.87リラという史上最低レベルをつけました。このトルコリラの下落の背景には、トルコという国がシリアやイラクといった紛争地帯に近く、また国内にクルド人との民族対立を抱え、テロが頻発、観光や産業が立ち行かない状況に追い込まれているという国際情勢があり、またほぼ独裁を敷いているエルドアン大統領が、中央銀行に圧力をかけて、その金融政策をないがしろにし、金利を低く抑えようとしたことなどの国内政治状況もあります。その上に、FRBの米ドル金利上げへの姿勢が、新興国からのマネーの流出に繋がり、トルコリラもまさにその動きの中に取り込まれているということがあります。
このような状況を背景に通貨安の続くトルコでは、今ゴールドへの投資、というよりは資金移動が大規模に行われているようです。特に2016年後半からのトルコリラ下落の加速化により、エルドアン大統領は国民に向けて、トルコリラの価値を防衛するために、国民が保有している外貨をゴールドもしくはトルコリラに交換するように訴えています。
トルコの銀行規制監督庁によると、2016年末のゴールド預金は169億トルコリラ(約45億ドル)となり、2015年末の106億トルコリラから急増しています。2016年の分を一年の平均価格でゴールドの量に換算すると51.6トンとなります。このうち159億トルコリラに当たる部分は個人に、残りの10億トルコリラは金融機関その他という割合でした。
2016年12月にはこれまでで最高のゴールド預金の伸びが見られました。11月の終わりには128億リラだったものが、12月末には170億リラに大きく増加しました。この時期に急激に残高が増えたのは、エルドアン大統領の呼びかけの効果ももちろん大きいのですが、ちょうど2016年年末に向けて、トルコリラが急落、そしてゴールドも同時に急落したことが、絶好の買いのチャンスになったと思われます。
このエルドアン大統領の呼びかけに対して、いの一番に反応した機関がイスタンブール取引所でした。彼らは全ての現金資産をトルコリラに交換しました。トルコのゴールド輸入量は12月には2016年最高の37トンを記録し、年間ゴールド輸入量は106トンとなりました。
この状況はまだまだ続きそうで、そうである限りトルコリラはさらにその価値が下がる可能性が大きいと言えます。投資としてのゴールド預金の需要は堅調に推移する一方、伝統的に小さくないトルコの宝飾需要は低迷が続きそうです。