BitcoinがGold を逆転
今週はBitcoinの話を少ししましょう。人の口の端にBitcoinという名前が登場し始めたのはおそらく2013年くらいから。
仮想通貨Bitcoinの価格がゴールドの価格を史上初めて上回りました。Bitcoinはいわゆるデジタル通貨(または暗号通貨とも)と呼ばれるもので、2008年にSatoshi Nakamotoという名前の日本人?が発明したことになっていますが、その真偽は謎に包まれています。Bitcoinは最近話題のblockchainという分散化された台帳技術で発行されています。これは改ざんが困難な記録の方式で、2009年からその利用は始まりました。Bitcoinはどこの国にも属さないので、特定の政府のコントロールは受けず、銀行の手数料のような無駄なコストもかからないことから、最初は私的で名前を知られたくないような取引、麻薬などの違法な取引の資金決済に使われてきました。しかし、それがここ数年急激に一般にも広がってきており、特に過去1年のBitcoinの価値上昇には目を見張るものがあります(上記チャート)。その大きな原動力となっているのが中国の需要です。中国では人民元の価値が落ちる一方で国内投資家がそれをヘッジする道具としてBitcoinがゴールドに変わりつつあるように感じます。実際中国の各取引所が公開している取引量を合算するとBitcoinの取引総量の9割以上が中国によるものということになります。この数字をそのまま信用するのには少し不安が残りますが、それでも8割相当の量が中国で取引されているのは確か。中国では2013年にBitcoinの手数料無料化競争が起き、その後にBitcoinの取引量が急増しました。中国でこれだけBitcoinが取引されるようになった背景は人民元のヘッジで、もっとはっきり書くと厳しい資本規制にしばられた中国で、Bitcoinを使えば、いとも簡単に海外に資産を持ち出せるという点が大きいのです。この点、ゴールドを使っても難しいことです。そのため恐らく従来はゴールドを買っていた投資家層が、今はBitcoinに移っているのでしょう。もちろん中国人が純粋?に投機好きだということもあるでしょう。
もう一つこのBitcoinの価値上昇の原動力となっているであろう理由として、米国証券取引委員会(SEC)のBitcoin ETFに対する認可が3月11日にも下りそうだという期待感があります。期待通りにBitcoin ETFの組成が認められるようになると、Bitcoinに対する爆発的な投資需要の高まりが期待できます。
現在、米国ではMicrosoft やPaypal、Dell、 Expediaなどのe-commerceが続々と決済手段としてのBitcoinを採用しており、レストランでもBitcoinでの支払いができるところがあります(日本でもまだまだ数少ないですがBitcoinでの支払いオッケーというお店が最近出てきています)。また、米国のような金融先進国が唯一のBitcoinの需要国ではありません。逆に銀行のインフラがまだまだ遅れている発展途上国では、出稼ぎ労働者が送金手段としてBitcoinを利用するという、「送金手段」としての需要が拡大しつつあります。現在の一般的な通貨がコントロールやコストの問題で使いづらかったことからBitcoinがその勢力を伸ばしつつあるのです。
また、先に書いたように投資需要も盛り上がっています。もはやトラックレコードを見るだけでも、2013年年初にはわずか13ドル(ゴールドは1675ドル!)だったものが、2017年3月6日現在1273ドル、(ゴールドは1233ドル)とゴールドを逆転するまでに上昇してきています。わずか4年足らずでその価値は100倍近くになったことになります。当然、世の中の投資家たちも注目するわけで、ドルやユーロ、円といった従来の通貨よりもはるかに値動きも大きく、プロでなくても短期取引のチャンスがはるかに大きく、また長期的にもその発展の可能性に投資する投資家も増えているのです。決済手段としての実需の買い、そしてそれによる値上がり期待の投資家の買いの相乗効果で、Bitcoinは大きく上昇してきており、この流れは時々何かがあってポジション調整の下げもあるでしょうが、長期的には基本的トレンドとして続いていきそうです。
では果たしてBitcoinはGoldの役割を全て引き受けることができるのでしょうか?さすがに僕はそれはないと思います。やはり最大の違いは実際の現物があるかないかという点です。しかし、それ以外の部分に関してはBitcoinはGoldと非常によく似ていると言えるでしょう。他の通貨や株式、債券のような、その価値を保証するような「発行体のリスク」はほぼ存在しない。そしてまた通貨のように、誰かが際限なしに発行できることはできない(発行量には上限が定められており、2100万枚)。こういった部分はゴールドやシルバーと酷似していますが、実際の現物としてのゴールドそのものを保有するように、Bitcoinを保有することはできません。あくまで「デジタル通貨」であり「仮想通貨」なのです。ですから究極の危機において、ネットワークが破壊されてしまえば、絵に描いた餅に終わる可能性があるのです。
世の中はキャッシュレスの世界に一直線に突き進んでいます。インドの高額紙幣の突然の廃止もインド政府が急速に現金を使わない経済へと動いていく一環だと言えるでしょう。その中でBitcoinは恐らく決済手段としてまだまだ広がっていき、その重要性はどんどん高まっていくのではないかと思います。