ゴールドは1200ドルで底を打った
6月のFOMCでの利上げ以降、ゴールドは売られ、ドルは買われるという展開が続いていましたが、ここに来てその流れが変わったようです。一時1204ドルまで下げたゴールドは、そこではしっかりサポートされて、7月18日現在、1240ドルを超えるレベルまで上昇してきています。直近に発表された米経済指標も、6月のCPIは市場予想の0.1%上昇に対して前月比変わらず。前年同月比は1.6%上昇と前月の1.9%よりも下落、伸びが鈍化しているのが明らかになっています。また、6月の米小売売上高も、前月比0.2%の減少となり、予想の0.1%増よりも悪い結果となりました。
ゴールドはこれに先駆けてイエレン議長の議会証言のハト派的な内容によって、既に上昇を始めていましたが、その後の米経済指標の悪い数字が、ちょうど1200ドルをブレイクせずに戻ってきたゴールド、そして一時的に売られていた米国債に買いの拍車をかけています。
この状況下において、FRBの早期の更なる利上げは難しくなってきていると考えます。おそらくもう今年中の利上げはないのではないでしょうか。また、そのバランスシートの縮小も、そのスピードはおそらく緩くなると思われます。
給料インフレは上昇していますが、商品のインフレ(特にエネルギー)は大体において失望する結果となっており、ニューヨーク連銀の言葉でもPCE(個人消費支出)インフレは弱い状況であると、FOMCの長期的目標へは、足踏み状態であることをはっきりと言っています。
消費者信頼指数も、よりはっきりしないものとなってきています。新規住宅着工件数は縮小、原油市場は、もしOPECが現在の協調減産を延長しなかったらどうなるかと気を揉み、米国の抱える貿易相手国との問題はデフレ要因、自動車売上と物価は下げ基調であり、ローンの規準が厳しくなりつつあります。
トランプ大統領の選挙前の話とは違って、政府の固定資産やインフラへの投資は増えるどころか逆に減少しており、この傾向は少なくとも年内には変わりそうにありません。
こうなると次に注目されるのはまた「米国債務上限」の話でしょう。2011年、2013年、2016年とこの話は表に出てきて、2011年にはその結果、S&Pによる米国債のダウングレードが行われたことはまだ記憶に新しいでしょう。今回の話が米国財務省が危機対策を押し出すというところまでは行かないとは思いますが、消費者と金融マーケットにとっては2011年とその他の年の間のようなインパクトがあるのではないかと考えます。そして、この問題を巡る一連の動きの中で、投資家は例えば米国債と比べてもゴールドの優位的価値を再評価することになるでしょう。
我々は米国の経済指標を曇ったレンズで見ている可能性もあります。しかし、今、ゴールドが下がるよりも、動かないか、もしくは上昇する可能性の方が高いと思われる背景には、マーケットのロングポジションが以前よりも大きく減少し、ほぼ「きれい」に整理されたということもあります。今Nymexの投資家ロングポジションは過去18ヶ月での最低レベルであり、6月の初旬から投資家はほぼ300トン以上のロングを売ったことになります。もはやこのマーケットに潜在的な大きな売り要因はなく、金利の上昇も年内ないとなれば、やはりゴールドは1200ドルを底として上昇基調を描くのではないでしょうか。