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南アでストライキ発生でも、プラチナ価格が急落している理由

プラチナ価格が急落している。東京商品取引所(TOCOM)のプラチナ先物相場は、1月21日の1グラム=4,984円をピークに、本日は一時4,500円台まで値位置を切り下げ、昨年12月25日以来の安値を更新している。

世界のプラチナ供給の7?8割を占める南アフリカでは、1月23日から主要鉱山会社で大規模なストライキが発生しており、1日当り9,900オンスの生産が喪失中と報告されている。世界のプラチナ供給は昨年実績で574万オンスであり、1日に1万オンス近い減産状態が1週間、2週間と継続すると、今年通年の需給見通しにも大きな影響が生じる可能性がある。

実際に2012年秋には南アフリカの大規模なストライキを受けて、プラチナ相場はスト発生前の4,000?4,500円のレンジから一時5,300円まで急伸している。このため、最近のプラチナ相場急落は、12年と同様の相場展開を期待していた向きにとっては失望的な値動きとも言える。

■プラチナ価格下落の論理

では、何が12年当時と異なるのかになるが、以下の三点が重要と考えている。

第一に、鉱山会社が手元在庫の拡充を進めていたこと。12年の大規模ストライキで一時供給環境が大混乱に陥った反省から、各鉱山会社はスト再発時にも安定的な供給を維持できるように、昨年以降に段階的に在庫積み増しを進めてきた。その結果、2?3週間程度のストライキであれば供給体制には大きな影響は生じない見通しになっており、ストライキ発生のインパクトが限定されている。

第二に、南アフリカ通貨ランド相場の急落。最近の新興国通貨安によってランド相場も下落しており、鉱山会社はドル建てプラチナ価格の下落をある程度まで許容できる状況になっている。従来よりも、ドル建てベースでの採算ラインが切り下がっていることが、プラチナ価格の上値を圧迫している。

第三に、ストライキが早期に終結する可能性。今回のストライキでは、南アフリカ政府が積極的に仲裁に乗り出しており、12年のような無秩序で暴力的なストライキに発展する可能性は限定されている。同国では総選挙が近いという政治要因に加えて、主要産業である鉱山業界の混乱が南アフリカ関連資産の総売りを招くリスクに対しても警戒感が強く、「ストライキが長期化しない」との警戒感が、投機筋のプラチナ買いの動きを限定している。

もちろん、ストライキが更に長期化すれば、プラチナ価格は上昇に転じる可能性が高い。いくら在庫に余剰感があるとは言え、ストライキが1ヶ月を超えるような状況になれば、供給不安の高まりは否めず、現物市場主導で値上がりリスクが高まろう。

もともと、今年の世界プラチナ需給バランスは3年連続で供給「不足」状態になる可能性が高いと見られるだけに、いつ上昇に転じても不思議ではない状況にある。このため、今後は減産に伴う上昇圧力が臨界点に達するまでに、ストライキを終結させることができるのかが問われることになる。



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マーケットエッジ

プロフィール

小菅 努

Tsutomu Kosuge

マーケットエッジ株式会社 代表取締役

1976年千葉県生まれ。筑波大学卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。金融機関、商社、事業法人向けのレポート配信、講演、執筆などを行う。商品アナリスト・東京商品取引所認定(貴金属、石油、ゴム、農産物)。

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