2月の金価格上昇の真相 ?金価格を巡る勘違いを斬る?
ドル建て金先物相場は、昨年12月31日の1オンス=1,181.40ドルをボトムに、足元では1,300ドル台前半まで値位置を切り上げる展開になっている。年初からほぼ一貫して戻りを試す展開となっており、昨年10月31日以来の高値を更新している。昨年末からの累計の上昇幅は10%を超えており、金融市場の値動きが不安定化する中で、金価格が良好なパフォーマンスを実現しているのは明らかである。
このように金価格が上昇すると、マーケットでは投資家が不安心理を抱くような材料を探す動きが活発化することになる。例えば、米国の金融緩和縮小を受けての新興国市場の不安定化、中国の理財商品償還を巡る混乱状況、米経済指標の下振れ傾向が強くなっていること、などである。これらの投資リスクに備えて、「安全資産」の代表格である金市場に投機マネーが流入しているとのロジックは分かり易いだけに、新聞等のメディアでも頻繁に見受けられる。
だが実際の所は、現在の金価格はこのようなリスクに反応して上昇している訳ではないと考えている。
ここで筆者が注目しているのは、金と他コモディティとの価格バランスである。例えば、金と原油の価格関係を見てみると、ここ1ヶ月以上にわたって金1オンス=原油13バレルという関係性が維持されている。要するに、金1オンスで購入できる原油は、常に13バレル前後で一定に保たれているのだ。
これは、「金価格は大きく上昇している」ものの、「金の購買力は変わっていない」ことを明確に意味する数値である。金価格の上昇とは、金の購買力を一定に保つために他商品市況に連動して上昇しているに過ぎない可能性が高い。ここに、「新興国経済や米国景気の先行きに対する不透明感」(日本経済新聞、2月25日付け)を見出すことは無理があろう。
もちろん、今後はこうした各種経済リスクを織り込む余地が存在しない訳ではない。ただ、少なくとも2月の金価格上昇は、他コモディティ市況の高騰とバランスを取っただけという極めて単純なロジックの方が、真実に近いと考えている。
足元では世界的な天候不順を背景にエネルギーや食糧価格などが高騰しているが、これが金価格急騰の最大の原動力である。裏返せば、こうした商品市況の高騰が一服すれば、金価格の上昇地合にもブレーキが掛かることになるだろう。
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