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南アの豪雨でプラチナとパラジウム価格が高騰中

自動車の排ガス触媒や宝飾品などに使用される貴金属プラチナやパラジウムの価格が高騰している。NYMEXプラチナ先物価格は、1オンス=900ドル水準での保ち合いが続いていたが、12月12日の取引では950ドルを突破し、11月4日以来の高値を更新している。また、パラジウム先物価格は7営業日連続で過去最高値を更新しており、11月27日に初めて1,800ドル台に到達したばかりにもかかわらず、12月12日の取引では1,900ドル台に乗せている。過去1カ月間でプラチナ価格は8.6%、パラジウム価格は14.6%、それぞれ値上りしている。

直接的なきっかけになっているのが、南アフリカの電力供給不安である。南アフリカでは今年1~3月期にも大規模な停電で経済が混乱に陥ったばかりだが、12月入りしてから再び停電の発生頻度が高まっている。もともと、南半球に位置する南アフリカは、これから夏のピークに向かうため、電力需要が高まり易い。それにもかかわらず、12月は大規模な豪雨、洪水被害の発生で発電施設にトラブルが生じ、夜間を中心に計画停電を余儀なくされる状況が続いている。

国営電力会社エスコム(Eskom)は、電力需給がコントロール可能な状態に向かうとの見通しを示している。しかし、10日の大規模停電の際には鉱山会社に対しても電力消費の抑制、つまり操業の抑制が要求されており、南アフリカ産に強く依存するプラチナやパラジウムの供給不安が高まった。

実際には、地下抗の労働者を夜間に引き揚げていることに伴う限定的な生産トラブルに留まっている模様だが、年末・年始を挟んで電力需要は高止まりするため、綱渡りの電力需給環境が続くことに対する危機感は強い。今回は、豪雨・洪水が停電の直接的なきっかけになったが、発電施設の老朽化でいつ突発的な停電が発生するのか分からない状況が続くことになる。

しかも、現在は米中通商協議が「第一段階」の合意に向かっており、米中の貿易摩擦が世界経済にもたらしている先行き不透明感が後退している。銅や原油、天然ゴムなどの幅広い産業用素材が高騰しており、ただでさえ工業用金属としての性質を有するプラチナやパラジウム価格は上昇し易い環境にある。

また、2020年1月には欧州の排ガス規制が更に厳格化することになり、それに準拠した規制を導入している中国やインドなどでも、規制強化が進むことになる。自動車メーカー各社は、「Euro 6d」規制の路上試験クリアのために排ガス浄化システムを強化しており、新車販売が低迷する中でも、自動車の排ガス触媒用のプラチナやパラジウム需要は上振れし易い環境になっている。

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マーケットエッジ

プロフィール

小菅 努

Tsutomu Kosuge

マーケットエッジ株式会社 代表取締役

1976年千葉県生まれ。筑波大学卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。金融機関、商社、事業法人向けのレポート配信、講演、執筆などを行う。商品アナリスト・東京商品取引所認定(貴金属、石油、ゴム、農産物)。

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