太陽がモチーフのTokyo2020聖火台、大会史上初めて燃料に水素を使用
東京オリンピックの開会式が2021年7月23日、東京・国立競技場で行われ、聖火台に聖火がともされました。開会式から一夜明けた24日、聖火は競技会場が多くあるお台場と有明にかかる「夢の大橋」に設置された聖火台へと移されました。
夢の大橋にある「第2の聖火台」は、オリンピック開会式で使用した式典用と聖火台と形状は同じですが、大きさはその1/3(直径1.2m)となります。
●夢の大橋の「聖火台」仕様
・サイズ:直径約1.2m×高さ約0.9m
・重さ:約200kg
・材質:鋳鉄(一部、ステンレス)
・その他:炎を出すバーナーの直径は約40cm
当時、東京2020大会の開閉会式の演出企画チームを統括していた野村萬斎のコンセプトに基づき、デザイナーの佐藤オオキ氏が具体的なデザインの製作を担当。モチーフは「太陽」で、オリンピック開会式で球体が花のように開くことで生命力や希望を表した、最終的な形状と同じものにしています。
東京2020オリンピック・パラリンピックの開・閉会式演出企画チーム統括であった野村萬斎氏の「太陽の下に皆が集い、皆が平等の存在であり、皆がエネルギーを得る」というコンセプトに基づいてデザインされた聖火台。求められた「太陽らしさ」を表現するために、耐熱ガラスの球体に炎を閉じ込めたり、炎を回転させて球状にしたりと、延べ85案が検討された。
試行錯誤の末、「五輪」をモチーフにした5枚のパネルが上下2段で構成された球状のものに。オリンピック開会式の終盤に、最終聖火ランナーを迎えるようにして「咲く」。これは、太陽だけでなく、植物が芽吹いたり花が咲いたり、空に向かって手を大きく広げたりといった、太陽から得られるエネルギーや生命力を表現したもの。
<nendo Tokyo2020 聖火台 より>
また大会史上初めて聖火の燃料に「水素」を使用。水素は燃焼する際に温室効果ガスの一つである二酸化炭素を排出しない、クリーンなエネルギーであり、今大会を契機に脱炭素社会の実現を目指していくというメッセージが込められています。
そしてこの水素は復興が進む福島県内の施設で製造されたもので、水素を製造する工程において水の電気分解に必要な電力は太陽光発電で賄われています。本来、水素は燃焼時に無色透明の炎で目に見えないため、炭酸ナトリウムを使用して炎色反応によって黄色の炎を演出。薪をくべたようにゆらめく炎の動きと形状になるよう"炎のデザイン"を試みたとのこと。
聖火台の総重量は2.7t、変形後の直径は約3.5m。一枚あたり約40kgの外装パネルは、10mm厚のアルミ版を切り出し、国内に数台しかない3500tの圧力を加えられる特殊ホットプレス機で成形後、切削加工で製作。切削時に熱が加わると歪みが生じることから、常にレーザーを使って形状を測定しながら超低速で作業は行われ、強度が必要な箇所には7mm厚、そうではない箇所は軽量化のため4mm厚に切削された。最後は職人の手仕事による微調整、研磨加工、耐熱塗装の塗布によって仕上げられた。
内部の駆動部はできるだけコンパクトでありつつ、高い防水性と耐火性、耐熱性が要求された。これらの機械類は極力、ポリゴン状の鏡面パネルで覆うことで、式典を演出するライティングや炎の光が乱反射することを目指した。
<nendo Tokyo2020 聖火台 より>
聖火台、昼と夜の顔を。
夢の大橋の「聖火台」の点灯期間は以下の通り。
オリンピック期間:2021年7月24日(土)~8月8日(日)
パラリンピック期間:2021年8月25日(水)~9月5日(日)
※点灯時間は24時間
- 撮影者:GOLDNEWS
- 場所:東京・夢の大橋