金について学ぶ

金の基礎


不確実性の時代に輝く金の保有意義

関心が高まる金(ゴールド)についての理解を深めるため、 「Tokyo Gold Festival 2012」が2012年12月2日(土)に開催された。なぜ今、金が注目されているのか、WGC(世界の主要金鉱山会社が運営の非営利組織)の日本代表に話を聞きました。
(2012年12月2開催 TOKYO GOLD FESTIVAL2012 「初心者にもわかる金投資入門ガイドブック」より)

■世界にわずか約22万トン 希少な金を求める動き活発に


―金はどのぐらい世界にあるのでしょうか?


森田 世界に流通している金は2011年末時点で約17万トンと言われていま す。17万トンというと多そうな気がしますが、縦・横・ 高さ約20メートルの立方体に収まってしまうほど、少ない量しかありません。 まだ掘り出されていない、確認されている地下に眠っている金は約5万トン。両方合わせても約22万トンしかない希少な金属なのです。

地上に流通している金の用途は 宝飾品が49.2%、民間投資が19.3%、国などの公的セクターが保有しているのが17.2%、加工用品が12.1%となっています。実需だけでなく、資産保全の手段としても利用されています。

■ドルや国債への不安から安全資産として金が注目

―金価格はどのように推移してきたのですか?

森田 今から10年前の2003年頃。ドルベースの金市場での価格は 1トロイオンス(約31.1グラム)=300ドル台前後でした。ところがその後、金価格は右肩上がりで急上昇し、2011年には1800ドルを突破しました。

―なぜ金価格が高騰しているのでしょうか?


ワールドゴールドカウンシル(WGC)日本代表 森田隆大氏

ワールドゴールドカウンシル(WGC)日本代表 森田隆大氏

森田 主な要因は5つあると考えています。第一は、ドルの信認の低下です。金の価格はドルと逆相関関係になる傾向があり、アメリカが信頼されてドルが強くなると、金価格は低迷し、アメリカの信頼が揺らぐとドルが弱くなり、金価格が高くなる傾向があります。

1991年のソ連崩壊により冷戦が終わり、アメリカが世界の唯一の超大国となった頃から、金価格は低迷を続けていました。各国の中央銀行は世界情勢の変化から、金を売って基軸通貨の 地位を確保したドルを購入する動きが活発になっていました。しかし2000年代に入り、2000年のITバブル崩壊、2007年のサブプライムローン危機、2008年のリーマンショックなど、アメリカ経済を揺るがす危機が何度か起きています。その後もアメリカ経済の先行きが不透明で、量的緩和など大量にドル紙幣をバラまく政策を続けています。結果、ドルの信認が低下し、今まで金を売っていた中央銀行セクターが、逆に外貨準備における金の保有を高める方 針を取り、ネット購入者になったことが、金価格の上昇に影響したと思われます。

第二の理由は、国債など各国政府が発行している債券=ソブリンへの不安が高まっているからです。 景気が悪化したり、金融危機が起きると、世界の投資家はリスクの高い金融資産から資金を退避させ、各国の国債など、リスクの低い資産に振り向けていました。ところが欧州債務危機が勃発し、国債が必ずしも安全資産とはいえないとの認識が広がっています。

ヨーロッパだけでなくアメリカや日本も財政問題は深刻化しています。国債が絶対的な安全資産とはいえません。国債が暴落したり、国家が破綻するような万が一の事態に備えて、より安全な金に一部の資産が移っています。



■中国・インド経済の台頭や 金ETFの登場で需要増える

森田 第三は、中国・インドが急速な経済成長を遂げ、所得が増えた国民が金を今まで以上に購入 していることです。両国は文化的・ 歴史的な背景から、資産を保全する手段としても宝飾品の金を購入しています。今後も経済成長に伴い、金への需要が旺盛である可能性が高いと考えられます。

第四の理由は、金を産出している鉱山会社が、今まで行っていたヘッジ売りを減少させていることです。これまでの金の低迷期には、鉱山会社は価格をヘッジする手段として金を売っていました。ところが最近は、金価格の下落リスクが少なくなったと見て、ヘッジ売りをするの をやめる傾向が強まっています。このように、鉱山会社のヘッジ売り圧力がなくなったことも、 近年の価格上昇の一因でしょう。

第五の理由は、金ETFが2003年に誕生し、今までより金に投資しやすくなったことです。ETFが登場する前は、金に投資するには金現物を購入し、保管しなければなりませんでした。しかし現物の裏付けのあるETFのおかげで、保管する手間なく、容易に金に投資することが可能になりました。 ETFの存在が金価格を押し上げている要因の1つになっています。

■個人の資産を守る手段として金を活用

――個人投資家が金を保有する 意義はどんな点にありますか?

森田 金価格が高騰している5つの要因を見てわかるように、今後も世界情勢は不確実性の時代が続く可能性が高いと思います。今までの投資方法では資産が保全できないケースも考えられます。金は万能ではありませんが、株式や債券、不動産とは違った特性を持つ資産です。ご自身のポートフォリオの一部に金を取り入れることで、資産保全の1つの手段として活用すると よいのではないでしょうか。

以上、2012年12月2開催 TOKYO GOLD FESTIVAL2012 「初心者にもわかる金投資入門ガイドブック」より

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