金の実践
手段の多様化により投資しやすくなった金
個人が金に投資するにはどのようにすればよいのか。フリーアナウンサーの大橋ひろこ氏が、金属・貴金属アナリストの亀井幸一郎氏に話を聞きました。
(2012年12月2日開催 TOKYO GOLD FESTIVAL2012 「初心者にもわかる金投資入門ガイドブック」より)
■少額でも購入できる金の現物
大橋 欧州債務危機など世界経済が不安定な状況が続く中、普遍的な価値を持つ金が注目されています。どのように購入したらよいのでしょうか?
亀井 金にアクセスする手段は大きくわけて2つあります。1つは、金の現物を購入すること。もう1つは金価格や金の指数などに連動する金融商品に投資することです。
大橋 真っ先に思い浮かべるのは、金地金や金貨を購入することですが、多額の資金が必要になり、一般個人には敷居が高いような気もしますが……。
亀井 金の地金(じがね)の購入は一般的には500グラムか1キログラムとなり時価では200万円以上のまとまった資金が必要となります。でもご心配なく。金地金は5グラムから、金貨は1/10オンス(約3・11グラム)から購入できます。また毎月数千円程度から積立で金を購入していく方法もあります。すぐに多額の資金を用意できなくても、金現物を購入できる方法はあります。
大橋 少額で金が購入できるなら一般個人も買いやすくていいですね!
亀井 ただ少量の金地金や金貨は製造コストが割高になってしまうため、手数料が高いというデメリットがあります。1/10オンス金貨を10枚購入する価格より、1オンス金貨を1枚購入した方が割安なのです。
大橋 それは残念。でも少しずつ買いためていける楽しみはありますよね。
亀井 その通りです。例えば子どもや孫のために1年に1枚、金貨をプレゼントしていき、成人したら20枚になるといったこともしやすくなります。金現物には実物資産として価格には換算できない「センチメンタルバリュー(心情的価値)」があるのが特徴の一つと言えるでしょう。気持ちを添えた贈り物として使うと喜ばれると思います。
■株式と同様に証券市場で売買できる金ETF
大橋 金現物は万が一の時に備えた長期保有に向いていそうですね。ただ最近は金融危機など、短いサイクルで何度も起きるような時代になりました。また短期的には金価格は大きく変動し、下がる場面もあります。短期・中期に適した金取引はありますか?
亀井 そうしたニーズに応えるのが、金価格や金の指数に連動する金融商品に投資するものです。ETF(上場投資信託)、商品先物取引、CFD(差金決済取引)があります。
大橋 それぞれの取引のメリット、デメリットを教えていただけますか?
亀井 投資初心者でも投資しやすいのがETFです。金ETFには現物の裏付けがあるものとないものの2種類あります。現物の裏付けのある金ETFは、間接的に金現物を購入するのと同じ効果が得られます。投資家の手元に現物がないので、金を保有している実感はありませんが、保管する手間がいりません。機関投資家が好んで金ETFに投資しています。
大橋 様々なETFの中でも金のETFは世界で人気があり、残高も多いそうですね。ETFなら保管や盗難の心配もないので安心です。
亀井 またETFは、株式と同様に証券市場で売買ができること、少額から投資できること、信託報酬が安いことなどのメリットがあります。市場が開いている時間にインターネットで価格を見ながら売買できます。ただし現物と引き換えできるETFは、その際に手数料がかかります。現物の裏付けがあっても現物と引き換えできないETFもあります。金ETFは中長期の投資から短期にも対応可能な金投資のオールマイティといえます。
■レバレッジを効かせて収益を狙う商品先物、CFD
大橋 商品先物取引やCFDで金を取引するメリット、デメリットはどんな点にありますか?
亀井 商品先物、CFDどちらにも共通して言えるのはハイリスク・ハイリターンの取引だということです。レバレッジをかけられるので、少額の資金で多額の収益を狙える一方、多額の損出を出してしまう場合もあります。例えるなら?よく切れるナイフ?。腕の立つ料理人が使えば、おいしい料理に仕上げることができますが、使い方を間違うとケガをしてしまう。投資経験がある人にとっては使い勝手のある取引手段です。
大橋 なるほど。具体的にどんな取引ができるのでしょうか?
亀井 商品先物は、東京商品取引所で取引されている金に投資する取引所取引です。取引単位が1枚1000グラムのものと、金ミニといって1枚100グラムのものがあります。市場が1円動くとそれぞれ1000円、100円動くので、少額資金で短期で利益を得られるチャンスがあります。9時〜15時30分、17時〜翌4時まで取引が可能です
大橋 まさに?よく切れるナイフ?ですね。売りからもできるので、相場が下がると予想した時にも使えそうです。CFDはどうでしょうか?
亀井 商品先物と同じレバレッジを効かせた取引ですが、取引所を通さない相対取引が基本です。また主な投資対象は、ニューヨーク商品取引所で取引される金先物価格のNY金など海外のものが中心です。ドル建てでできること、ほぼ24時間、ネットで取引が可能なことなどが特徴です。為替リスクに加え取扱い先により売り買いする価格のスプレッド(値幅)に差がありますので注意してください。
大橋 金にはいろいろな取引方法があるのですね。それぞれの手段をうまく使い分けて投資することが大事だと感じました。ありがとうございました
(2012年12月2開催 TOKYO GOLD FESTIVAL2012 「初心者にもわかる金投資入門ガイドブック」より)